AX 経営学は実生活に本当に役立つのか?

経営学は実生活に本当に役立つのか?

ビジネススクールでは学べない 世界最先端の経営学
入山 章栄 日経BP社

経営学は役に立つのか?

著者の出した結論は“経営学は「思考の軸」に過ぎない”というものだった.

経営学が提供できるものは以下の二つであると彼は述べている.

1.理論研究から導かれた「真理に近いかもしれない経営法則」
2.実証分析などを通じて,その法則が一般に多くの企業・組織・人に当てはまりやすい法則かどうかの検証結果

上の二つを思考の軸・ベンチマークに使うことが,経営学の「使い方」であると述べている.

では,実際に企業の競争戦略を立てる場合にはどうしたらよいのか?
その答えとして,有名な下記のような二大戦略フレームワークを述べている.

●CSP戦略
●RBV

加えて,次のような戦略を紹介している.

■リアルオプション的戦略
不確実性の高いときには,まず少額でもよいから投資・生産を始めてみるという戦略である.シリコンバレーのスタートアップ企業によくみられる方法.

またイノベーション研究について,以下の二つの使い分けを推奨している.

●exploration(知の探索)
●exploitation(知の深化)

知の探索⇒自分とは離れた遠くの知を幅広く探して,自分の持っている知と新しく組み合わせること.

知の進化⇒今持っている知を深堀りすること

上記についての研究として,「組織の考えをメンバーが学ぶ」「組織がメンバーの考えを学ぶ」という双方向性のシミュレーション分析結果が紹介されている.

1.メンバーが組織に考えを学ぶスピードが遅いほうが,最終的な組織全体の学習量は増加する.
2.組織の考えを学ぶのが早いメンバーと遅いメンバーが混在しているほうが,最終的な組織全体の学習量は増加する.
3.組織のメンバーは一定の比率で入れ替えが合ったほうが,組織の最終的な学習量は増加する.
4.上記3の効果は,特に組織を取り巻く環境の不確実性が高いときに強くなる.

つまり,事業環境の不確実性が高い時ほど,知の探索が必要になるということだ.

他には,“失敗は成功のもと,ビジネスでも言えることなのか?”という質問についても述べている.

1.一般に成功体験そのものは,「その後の成功」確率を上げる.
2.とはいえ,大事なのは成功体験よりも失敗体験
3.組織に失敗体験が乏しい場合に限り,その組織の成功体験はむしろその後の失敗確率を高める(パフォーマンスを下げる)
⇒失敗体験が乏しいまま,成功だけを重ねてしまうと,むしろその後は失敗確率が高まっていく.つまり,失敗体験を十分に重ねてから,その上で成功を重ねることができるもある.

私が驚いたのは,「真にグローバルな企業」はほとんど存在しないということだった.2001年の時点で、真にグローバル化を遂げていた企業は世界中で以下の9社のみであったということだ.

IBM
インテル
フィリップス
ノキア
コカ・コーラ
フレクストロニクス
モエ・ヘネシー
ルイ・ヴィトン
ソニー
キャノン

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世界は本当にグローバル化しているのか?

そこで,世界は本当にグローバル化しているのか?という疑問がわくが,著者は明快に以下の三つの事実を示している.

1.世界はほとんどグローバル化していない
2.世界は狭くなっていない
3.世界はフラット化していない

またダイバーシティについてはこう述べている.
ダイバーシティとはいわゆる人の多様性のことで,ダイバーシティ経営というは「外国人・女性などを積極的に登用することを示し,組織の活性化・企業価値の向上を図る」という意味になると.

著者はダイバーシティのタイプとして以下の二つを挙げている.
1.タスク型の人材多様性
⇒実務に必要な「能力・経験」の多様性
2.デモグラフィー型の人材多様性
⇒性別・国籍・年齢などの,その人の「目に見える属性」についての多様性

成功するリーダーについては,優れたビジョンを持つリーダーが必要だと.

では,優れたビジョンとは?

1.簡潔であること
2.明快であること
3.ある程度抽象的であること
4.チャレンジングなこと
5.未来志向であること
6.ぶれないこと

次に,CSR活動については,
CSR Corporate Social Responsibility:企業の社会的責任
・CSR は企業の業績を高める
・CSR指数が高い企業ほど,資金制約を緩和できる
・CSR活動が企業の信用を高め,いざネガティブな事件に巻き込まれた場合でも極度の不信に陥るリスクを減らすことができる

起業活性化に向けては,起業し,もし事業に失敗した場合でも,その事業がたたみやすければ再出発もしやすい.しかし今の日本社会ではそれは難しいので,副業的に起業する「ハイブリッド企業家」を目指すのがよいと述べている.

最後に企業家の思考パターンとして,米ハーバード大学のかのクレイトン・クリステンセンが着目したのは以下の4点を教示している.
1.クエスチョンニング
2.オブザーヴィング
3.エクスペリメンティング
4.アイデア・ネットワーキング

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コメント

  1. eikeido より:

    Thanks for your comment.